現代の日本社会において必要不可欠なVPNとは?

ご存知の通り、ここ数十年の急速なテクノロジーの進化により、インターネットを通じて、世界中の様々な人とリアルタイムで交流したり、あらゆる情報をすぐに調べられる世の中になりました。これまでの日本社会では、満員電車に乗って会社に出社するという生活が当たり前でしたが、2019年末から現在も続く世界的な新型コロナウイルスパンデミックの影響で、前述のようなライフスタイルが大きく変わりました。そして、業種にもよりますが都市部を中心にリモートワーク(テレワーク)が急速に浸透しはじめています。

このリモートワークの普及によって、自宅やカフェをはじめ、ワーケーションという言葉の名の通り、地方や旅行先などでも通信環境さえあれば場所を問わず、仕事することが可能になりました。この就業形態の変化は、これまでの日本社会で当たり前とされてきたルールや目に見えないしがらみからの解放を意味し、以前よりも自由に自分の時間を使うことができる新時代の到来を予期させてくれます。

しかしながら、期待と不安は表裏一体で、新たな問題も発生していることも事実。あらゆることをインターネットを通じてオンラインで行なってしまうと、気づかないうちに個人情報が盗まれたり、サイバー犯罪に巻き込まれる可能性があります。近年、その解決方法として有効なのがVPNと呼ばれる接続方式です。今回は、VPN接続の仕組みをはじめ、VPNを使用する上での長所や短所などを初めての方にもわかりやすく解説していきます。

VPNについて

VPNは、Virtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)の頭文字をとった略称で、特定の人だけが使用可能なネットワークを使用することができます。一般的には自宅や公共のWi-Fiに接続することでインターネットを使用することができますが、これは各VPNサービスプロバイダーが保持しているVPN専用サーバーを経由してインターネットに接続することで安全性を保ち、かつプライベートが確立された状態で安心してインターネットを利用することが可能になります。これによってユーザーのIPアドレスは、本来アクセスしている場所ではなく、VPNサーバーがある場所からアクセスしているように見せかけることができるので、結果的に本当の位置情報を誰にも知られずに済みます。このVPNサーバーは世界の様々な国々にあり、各プロバイダーの契約プランにもよりますが、基本的にはお好みの国を自由に選んで接続できます。そうすることで、日本にいながらアメリカでしか放送されていないNetflixの映画ができたり、同じように海外にいながら日本の番組を視聴できるなど、地域制限のあるコンテンツが視聴可能になるという恩恵があります。

セキュリテイ面に関しては、VPNサーバーを通して送信されるインターネット通信は暗号化されるので、ハッカーなど第三者に情報が漏れる心配はありません。その他にもプロバイダーによっては様々なセキュリティ対策機能を兼ね備えている場合があります。そして、スマートフォンやパソコン、タブレット、スマートテレビ、IoTデバイス、ワイヤレスルーターなど、あらゆるデバイスで利用可能です。こういったVPNサービスプロバイダー各社の提供するサービスがVPNを選ぶ際の決め手にもなります。

また、ここ数年、大企業や国家単位でのサイバー犯罪が増加しており、その規模が大きくなればなるほど、その被害を取り戻すのに労力がかかります。個人・団体に共通してインターネット上でのプライバシーと安全性を確保することは、現代社会において最も重要な課題といえるでしょう。

しかし注意しておきたいのは、VPNはオンライン上での安全性を確実に保証するものではないという点です。どのプロバイダーのVPNを使用するかによってその機能性も大きく異なり、使い方によっては犯罪になることもあります。誰もがオンライン上でストレスなくインターネットを利用できるようになるためにも、これから様々な例をもとに正しい使い方を紹介していきます。

VPNの長所

大企業の顧客情報の漏洩、SNSでの個人IDの盗難が引き起こすプライバシーの侵害、クレジットカードや銀行口座情報の盗難やフィッシング詐欺などによる金銭的な犯罪など、オンライン上での犯罪は日々増加しており、世界中で社会問題となっています。このような脆弱性や攻撃を受けないために個人や企業はセキュリティ対策としてVPNサービスを導入し始めています。今回は、VPNに接続してインターネットを利用する際の様々な長所を紹介します。

1.セキュリティの強化

オンライン上のセキュリティを保護する対策として、ウイルス対策ソフトやファイアウォールなどがありますが、VPNもその1つといえるでしょう。これらの対策を複数組み合わせることで最適なセキュリティ対策となる可能性があります。

また、リモートワークの普及によって自宅以外で仕事をする際に公共のWi-Fiを使用する機会が増えていますが、実はここが落とし穴といえます。ほとんどの公共のWi-Fiは、セキュリティ面で脆弱なのでサイバー犯罪者たちの格好のターゲットとなります。しかし、VPNを接続することで、VPN経由で送信される情報は全て暗号化されるので漏洩の心配はありません。導入されている暗号化のレベルは、アメリカ軍や政府機関などが使用している最高級の256ビットAES暗号化を搭載しているVPNプロバイダーは安全といえるでしょう。

加えて、データの遠隔転送に関しても社外から自社の独自サーバーにアクセスする際に送信されるファイルは暗号化されるので、安全性は確保されます。特にプロバイダーから専用のP2Pサーバーが提供される場合は機密データを安全に共有できます。

だがもしも、Wi-Fiが途中で切れたり、不具合が起こってしまった場合はユーザーの個人情報は公開されてしまいかねません。情報が漏洩しないためにも自動的にインターネット接続を切断する「キルスイッチ」機能を備えているVPNを選びましょう。

そして、VPNプロバイダーの中には、使用料が無料の代わりにユーザーの情報を保存して高値で売り飛ばす会社も存在するので注意が必要です。業界のトップレベルのVPNプロバイダーは、ノーログポリシーと呼ばれるユーザーのあらゆる情報を保存しないという規約を採用しているので安心できます。VPNを選ぶ際は、このノーログポリシーが導入されているかどうかは必ず確認するようにしましょう。

2.匿名性の維持

VPNは、ユーザーの匿名性を高めるという面でも貢献しています。VPNサーバーに接続することで、自分のIPアドレスとは異なるIPアドレスを割り当てるため、本来いる場所とは異なる場所にいるかのように見せかけることができます。これによって、位置情報などによって個人を特定することが困難になるので、個人情報を狙うサイバー犯罪者たちを惑わすことができます。

また、VPNに接続せずにインターネットを閲覧すると、頻繁に訪れるウェブサイトにデジタルフットプリントと呼ばれる履歴がついてしまい、それによって個人情報を特定され、犯罪に遭ってしまう可能性があります。匿名性を維持するためにも、VPNに接続してからインターネット接続するようにしましょう。

3.地域的な制限をブロック

現在、映画やドラマ、スポーツの試合、ゲームなど様々なオンライン上のコンテンツは、それぞれのマーケティング戦略の一環で地域的な制限があります。Netflixなどの動画配信サービスは、ライセンスの関係上、地域によって視聴できるコンテンツを限定しています。こういった地域制限はアクセスする際のIPアドレスで判断し、振り分けられています。しかし、VPNに接続することで本来滞在している国以外のIPアドレスを取得できるので、このような制限を回避してコンテンツを楽しむことができます。国や地域によってゲームの発売時期が異なったり、違ったサービスがある場合でも、VPNを使用することでそれらを手に入れることが可能になるでしょう。

4.速度制限を回避

VPNプロバイダーのサービスを提供している地域や契約プランによっては、速度制限がある場合があります。国民のインターネット使用を制限している独裁国家などもしかりです。この場合は、遠隔地にあるVPNサーバーを利用することで、速度制限の対象からうまく外れることができ、速度制限なくインターネットを楽しむことができます。

VPNの短所

これまで紹介してきたことだけを見ると、全くメリットしかないよう思えるVPNですが、当然、使用することでのマイナス面も存在するので、VPNを使用する上での注意点として把握しておきましょう。

1.費用の負担

無料版VPNも存在しますが、より安全性を高く保ち、良質な機能を使用したい場合は、どうしても費用がかかってしまいます。しかしながら、オンライン・オフライン問わず自分の身を守るための薬や保険だと思えば安いものでしょう。

2.接続速度の低下

VPNに接続することで送信するデータが暗号化され安全性が高まりますが、これには大変負荷がかかります。よって接続速度に遅延が生じる場合があります。また、物理的に遠い位置のVPNサーバーに接続すると速度が低下する可能性があるので、比較的距離が近いサーバーへの接続をおすすめします。

3.バージョンが古いと互換性に欠ける

接続するデバイスやルーターのOSのバージョンが古い場合、VPNアプリをインストールできなかったり、不具合が生じてしまう場合があります。VPNアプリは最新の問題に対応するためにバージョンを常時、更新し続けているのでできるだけ最新版を使用するようにしましょう。

4.VPNの使用を禁止する国もある

世界には、VPNの利用を制限している国やVPNの利用を完全に禁止する国も存在するので、いつも訪れる国と違う国に渡航する前はVPNが利用できるかどうかを事前に確認しておきましょう。

VPNを選ぶ際に必要な機能

VPNを選ぶにあたって、使いやすくて安全性が高く、より機能性に優れているものを使用したいと誰もが思うでしょう。様々なVPNサービスプロバイダーが提供するプランの中から最適なものを選ぼうとする際に、多くのユーザーにとって必要不可欠な機能を紹介します。

広い帯域幅と広範囲を網羅しているサーバー

一般的に質の高いVPNサービスとしては100台以上のサーバーを保持していれば十分といえます。より高いレベルをもとめるのであれば、仮想サーバーと物理的なサーバー合わせて1000台以上あるプロバイダーをおすすめします。

また、広い帯域幅の専用サーバーを備えているとトレントや動画配信、P2P大量ファイル共有などが可能となり、通信サービスの混雑を緩和することができます。

接続スピードが高速

一般的なVPNの場合、セキュリティをより堅固なものを利用すると速度が低下する可能性が高まりますが、業界のトップクラスのVPNプロバイダーは、十分なセキュリティレベルを維持しつつ、より高速な速度を提供することが可能です。

データの暗号化

個人情報が盗まれたり、ハッカーやサイバー犯罪者から攻撃されないためにも、データの暗号化は必要不可欠といえます。マイクロソフトやNSA、アップルなどの世界的企業やアメリカ軍が絶大な信頼を寄せているAES256暗号化は、今日に至るまで誰も解読が不可能ということで安心感があります。なので、AES256暗号化を導入しているVPNプロバイダーはおすすめです。

キルスイッチ

もし、VPNサーバーへの接続が切断された場合、IPアドレスやデータが公開され、漏洩してしまう可能性があります。キルスイッチはこのようなVPNサーバーの接続を切るのと同時に該当デバイスのインターネット接続を自動的に切断し、データの流出を防ぎます。

一つのアカウントで複数のデバイスに接続可能

VPNプロバイダーの中には、1つの契約で1つのデバイスしか利用できない場合がありますが、複数のデバイスを利用可能なものもあります。業界トップレベルのVPNプロバイダーであれば、最大5台まで同時接続可能なところが多いです。

複数のプラットフォームとの互換性

スマートフォンやPC、タブレット、スマートテレビ、IoTデバイスなど様々なプラットフォームがありますが、なるべく複数との互換性があるプロバイダーを選ぶようにしましょう。たまにサービスプロバイダーが複数のデバイスで対応可能と謳っているのに実際は1つしか対応されないという場合もあるので選ぶ際には気をつけましょう。

使いやすさとカスタマーサポート

VPNを初めて使用する方にとって、説明書があったり、使い方が簡単であるかどうかは重要といえるでしょう。また、何か問題が起こった場合でも、24時間365日対応しているカスタマーサポートがあるとより安心です。

初めての利用に最適的なVPN5選

VPNを初めて利用する際、いろいろと不安なことは多いはずです。上記で紹介したような必要不可欠な機能を備えており、初めての方にとっても最適といえる5つのVPNを紹介します。

1. ExpressVPN

VPN業界の中でもトップレベルといえるのがExpressVPNです。他社が提供しているようなサービスはほとんど網羅しており、堅固なセキュリティを兼ね備えているので安心です。また、速度が非常に速いので動画視聴に最適といえます。

2. NordVPN

NordVPNは、VPN業界でもサーバー数が最も多い部類に入ります。拠点をパナマに置いているということもあり、データ漏洩の心配がなく、とても信頼感が高いVPNプロバイダーといえます。

3. Surfshark

VPNに接続して動画視聴したいができるだけ安く抑えたい方にとって、Surfsharkは最適といえるでしょう。一つのアカウントでデバイスへの接続が無制限なのも魅力の1つです。

4. PrivateVPN

PrivateVPNは、Windowsに適しているプロバイダーです。動画視聴に向いており、加えて堅固な暗号化も提供しています。

5. CyberGhost

MacなどAppleのコンピューターに最も適しているVPNプロバイダーです。最安値までとはいきませんがそれなりに安く、セキュリティ面でも安全性が高いといえます。

各デバイスでのVPNの設定方法

現在社会において、もはや誰もが使用しているスマートフォンをはじめ、パソコン、ルーター、スマートテレビなどのデバイスでVPNを使用するための手順を紹介します。注意点としては、VPNやデバイスのOSによっては設定方法が若干異なる可能性があるので、その場合は公式サイトをチェックしましょう。

スマートフォンへのインストール

1. iOS端末はApp Store、Android端末はGoogle PlayStoreでVPNアプリを選択し、ダウンロードする。

2. ダウンロード後、アプリを有効化してログインし、お好みの場所のサーバーに接続する。NordVPNなど、アプリによっては接続に最適なサーバーを自動的に選択するものもあり。

3.接続されているかどうかを確認したら完了!

パソコンへのインストール

1. VPNの設定ファイルをダウンロードし、インストールする。

2. インストールしたアプリを起動し、サーバーに接続する。

ルーターへのインストール

自宅のあらゆるデバイスに1つ1つVPNアプリをインストールするのは非常に面倒なことなので、メインのルーターにインストールするようにしましょう。以下、インストールの手順です。

1. VPNを選び、ルーターのファームウェアをダウンロードする。

2. お使いのルーターをパソコンに接続する。

3. パソコン上で表示される手順に沿って進んでいく。

4. ユーザー名とパスワードを作成する。※セキュリティ上、デフォルトのログイン情報は絶対に使用しないようにしましょう

5. ルーターに接続する時に「ファームウェアのアップグレード」という表示をクリックし、過去にダウンロードしたVPNファームウェアを選ぶ。

6. 契約後に提供された認証コードを入力し、有効化する。

スマートテレビへのインストール

スマートテレビはファームウェアに対応していません。インターネット接続可能なテレビを保護するための最善策としては、VPNをインストール済のルーターに接続、もしくはVPN保護機能を兼ね備えているパソコンに接続しましょう。

まとめ

ここ20年の急速なインターネットの普及により、世界中どこからでもインターネットを通して、様々な体験ができる便利な世の中になりましたが、同時にオンライン上で起こるサイバー犯罪など新たな問題も出てきたのも事実です。現代における人々の生活の便利さは、物理的な移動や接触がなくても自宅にいるだけでオンライン上で犯罪に巻き込まれる可能性もあり、常に危険と隣り合わせの状態といえるでしょう。

そんな世の中でVPNは必要不可欠な存在といえ、その仕組みや機能を学ぶことでVPNに対する知識が高まり、より信頼性の高いVPNを使用できるようになるでしょう。今回紹介したVPNは業界の中でも優れているものばかりです。無料版と有料版でいくつか違いがありますが、不安なく利用するならば多少費用がかかっても有料版を使用することをおすすめします。VPNを使用し、オンライン上での安全性を確保しながらインターネットを楽しみましょう。